遺言書と遺書

ここ数年、ALS患者に事前指示書を求める医師が増えている。
だがチョット待てよ。ALS患者の終末期に伝えられるのって、せいぜい辞世の句だろう
と思うぞ。
健康な人バージョンと不健康バージョン事前指示書は必要ではないかな。

17年目の終末期
ALSの診断告知は23年前です。
「予後は悪く3年〜5年で死亡」と医学書に記されていて、大変ショックをうけたもので
す。
同じ頃、同じ病院に著名な俳優が入院されていて、彼はガンで余命半年と報道されていま
した。
2年ほどで逝かれた事を覚えています。
私自身も、告知後3年で母を4年で父をガンで失くしています。
私の余命を5年と信じていた父母の、早すぎる死でした。
経過的には、上肢⇒下肢⇒構音嚥下⇒呼吸と障害が進んでいます。
呼吸障害が出現したのは7年後でした。
自分自身は本当に俗物なので、高邁な思想も生きる上での哲学も持ちません。
しかしALSを知ってから、少し痛みが分る人になった気がします。
痛みを知り、それを克服する事に人である事の存在意義があるのかも知れません。
克服の方法は様々でしょう。
私は痛みには痛み止め、悩みには睡眠を、眠れなければ眠剤の人です。
合理的ですが、今思えば危うい思考回路でした。
 時に、苦しさは人を貧しくさせる気がします。
私が最悪の苦痛の中にいた時に、少し強い薬品をさり気なく増やしていれば、医学書通り
に死んでいました。