「喪失する身体とともに」

まだまだだな。

「喪失する身体とともに」
12/06 第15回日本臨床死生学大会
NPO法人 ALS/MNDサポートセンターさくら会
日本ALS協会 
橋本みさお


ここだけは、長期人工呼吸器使用ALS患者に死んだ気になって伝えて欲しい。
臨床死生学は、長期に呼吸器を使用して伝える事に難渋し、
死とともに生きる私達の独自の文化なのではないかと思う。
多くの人は、死を言葉として理解していると思うのだけれども、
私たちのように日々死を隣に置いて暮してはいない。
個々の人生の質や量は、大きな歴史のなかでは殆んど問題でないことは理解している。
そうです私が呼吸器をつけて20年生き60才で死のうが、32才で死のうが
私以外の歴史には何も影響はありません。個人の問題です。
長い期間ALSで呼吸器をつけている状況は静かで、執行を待つ囚人に近くもあります。
(彼らには十分に伝える手段と権利が与えられている)
うかつにも、外眼筋の喪失はもう少し後の事だと思っていた。
この5年で、眼球と眼瞼の反応のズレが緩やかに広がっている現実を認めながら、
そろそろ次の準備が必要かなと思うこの頃です。

喪失の歴史
85年 右手第2指が伸ばせなくなった事に始まり、気がつけば、左肩も上げる事ができません。
   年末には、転び易くなりました。
87年 車椅子。発語発声不能
89年 四肢全廃。
91年 嚥下機能。
92年 呼吸筋まひ。
現在も緩やかな喪失を感じながら日々を暮している。
医学書に記載されていない喪失を体験し、今は未だ興味本位で自分のALSを見ている。

******

ALS・筋萎縮性側索硬症は、ニューヨーク・ヤンキースの鉄人ルー・ゲーリック選手が
罹患したことから、米国では「ルー・ゲーリック病」として広く知られています。
残念ながら、彼は発病後3年で亡くなりました。約70年も前のことです。
 宇宙物理学のホーキング博士も著名な患者の一人です。
国の定める特定疾患、いわゆる難病のひとつです。
運動神経をつかさどる細胞だけが選択的におかされ、
終末期には呼吸筋も眼球も動かなくなる不思議な病気です。
 終末期と書きましたが、ALS患者の終末期は定義づけされていません。
人工呼吸器を外しても簡単に死なないようで、ため息で蘇生してしまうそうです。
苦しそうですね。